ロードノイズって何ですか?その2、続きでございます。
今回はメカニズム編ですね。ロードノイズがうるさいので対策するとなると、まずはどうするか?振動の問題ですので、基本の考え方、周波数応答実験ということを考えます。
周波数応答というのは、
入力→構造体→出力
シンプルな考え方、ある物体に振動を加えたら、どういう出力があるのか?音波、振動の波は様々な周波数、高さの集合体の波ですので、どのような波を加えると、どう反応するのか?
私はたまに整体やマッサージを受けに行くのですが、体のどこを押すと命の泉湧くか?整体師の人はよくわかっていますよね。
激痛足ツボ師とかもいて、私のどこのツボを押すと、どう反応するのか?
私自身の周波数応答実験は、足ツボを押すと私の肉体(構造体)は痛みの声として反応する、「痛みノイズ」(?)の周波数応答実験だー!とかは思わず、疲れがとれます、はい。
で、タイヤの場合は、どうツボを押すか、つまり、どう加振するか、これが重要です。
それは、
タイヤには荷重がかかる
タイヤの内圧がタイヤの物理現象に影響する
タイヤは通常回転している
ということがあるからです。
とはいえ、タイヤというものがどういう振動体か理解するのにこんな方法で実験しています。
タイヤそのものがどういう振動体かを知る、あえて荷重をかけて走行状態に近くして加振実験をする。ただ回転状態で加振実験はできないですが、開発する上では荷重状態と内圧管理さえすれば走行時のロードノイズを理解することができると思います。
これは実際のあるタイヤでの加振結果ですね。
あらゆる物には固有振動数、つまり振動をしやすい周波数がある。
洗濯機が段々回転が上がっていく(これも周波数を変化させる加振実験のようですが)とあるところでガタガタと震え始めませんか?これが固有振動数です。ある振動の入力が物体の固有振動数と相まっての振動が強くなる現象を共振と呼びます。
私はF1観戦で中嶋悟さんの応援で日本国旗を持って鈴鹿サーキットへ行ったことがあります。当時としてはあまり日本国旗を持っている人はいなく、サーキットまでの道を歩いていたら車道は渋滞していて軽トラの上で国旗を持っている二人組に「あー、日本国旗の人いたー!」と言われ、突然二人が日本国旗を振り始めました。私もそれに応えて、日本国旗を振り始めました。固有の国旗:日の丸による、固有の旗振り、国旗の振動、共振現象ですね。(路面状況も鈴鹿サーキットならではの道路ノイズ)
というわけで、タイヤの持つ固有の振動を理解できる周波数応答。
ロードノイズに関係が深いのは、特にふたつですね。
共振1次モード、気柱共鳴音。周波数応答のグラフでも明確に特徴あるピークがわかりますよね。
車というものは道を走るものですので、実際にタイヤを車につけて、粗面路を走ってみる。バッティングセンターでの練習から試合に出て打席に入る。試合(?)では、自動車メーカーさんの商品性の意向が大事になるので、その意向を理解するわけですが、人が聴いての評価(官能評価)、マイクロフォン計測による評価になるわけです。
当時こういった仕事をしていて、私が常に疑問に思っていたのは、計測結果と官能評価が一致しないことがあるということです。それが、私が心理音響学へと、この先駆り立てる動機にもなっていますし、さらに人に印象を与えるにはという能動的な意識へのサウンドデザインへと発展する要因にもなっています。
タイヤ音の場合では、計測結果と人の評価がうまく相関しないのは、特にこの二つの音の場合であると思います:
ー 突発的になる1音のタイヤ気柱共鳴音
ー コーストダウン時のタイヤパターンノイズ
どちらも時間変化の音での評価になり、時間平均では解決しないと思います。最近はAI、機械学習を用いて音質評価をする研究発表をしています。現在のAI技術で時間変化も追いかけれるものと思っていますので、別の機会にこの話はしたいと思います。
ロードノイズとは何か?皆さんの感想はいかがでしたでしょうか?
自動車NVHに関わる方だけでなく、全く知らなかった方も、こんな深い世界でタイヤ音に、タイヤ、自動車開発にNVHエンジニア達は携わっていることを知る機会になっていれば幸いです。